福田和也『作家の値うち』の続編を予想する
新設    2009(平成21)年5月24日
更新    2010(平成22)年5月30日
更新    2010(平成22)年6月20日
更新    2010(平成22)年10月2日
更新    2011(平成23)年7月3・11日
最新更新 2012(平成24)年10月28日

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福田和也『作家の値うち』(飛鳥新社、2000年)

 『作家の値うち』とは、文芸評論家福田和也氏が、ワイン批評家ロバート・M・パーカー氏の方法に倣って、日本の現役作家(物故者は除かれている)100人(エンターテイメント…大衆文学…界から50人、純文学界から50人)を選び、彼らの代表的な著作を100点満点で点数化して批評したブックガイドである。2000(平成12)年4月、飛鳥新社から出版された。

 以下、当書に取り上げられている作家を並べてみよう。底本の配列どおり、エンターテインメント編→純文学編の順、作家の配列は五十音順とした。



T エンターテインメント編
浅田次郎
綾辻行人
有栖川有栖
池宮彰一郎
伊集院静
五木寛之
井上ひさし
逢坂剛
大沢在昌
笠井潔
香納諒一
北方謙三
北村薫
京極夏彦
桐野夏生
栗本薫
小池真理子
佐々木譲
佐藤亜紀
佐藤賢一
椎名誠
篠田節子
島田荘司
白川道
真保裕一
鈴木光司
高橋克彦
高村薫
田中芳樹
津本陽
天童荒太
乃南アサ
馳星周
花村萬月
帚木遇生
林真理子
東野圭吾
藤本ひとみ
藤原伊織
船戸与一
宮尾登美子
宮城谷昌光
宮部みゆき
矢作俊彦
山口雅也
山崎豊子
山田太一

横森理香
連城三紀彦
渡辺淳一

U 純文学編
阿川弘之
阿部和重
李恢成
池澤夏樹
石原慎太郎
江國香織
大江健三郎
小川国夫
小川洋子
奥泉光
加賀乙彦
金井美恵子
川上弘美
北杜夫
金石範
久世光彦
車谷長吉
河野多恵子
小島信夫
小林恭二
小林信彦
佐伯一麦
坂上弘
佐藤洋二郎
島田雅彦
笙野頼子
高樹のぶ子
高橋源一郎
多和田葉子
辻仁成
筒井康隆
富岡多恵子
中沢けい
日野啓三
平野啓一郎
藤沢周
古井由吉
保坂和志
町田康
松浦理英子
丸谷才一
丸山健二
宮本輝
村上春樹
村上龍
村田喜代子
安岡章太郎
山田詠美
柳美里
吉本ばなな

以上の100人である(リンクを貼っていない方は、ウィキペディアに個人の項目が作成されていなかった方である)。


 上記の一覧をご覧になって、気づいた方もおられるかと思うが、『作家の値うち』出版(2000年4月)当時の現役作家のうち、何人か抜けている作家がいる。
 福田氏はその理由として、


「これはと思われる作家の名前が数名落ちていると思われる。かような自体が出来したのには、いくつかの事情が重なっている。その事情の中で大きなものは、@取り上げるべき主要作品が入手不可能で、論じるのが困難であること。Aあまりにも濫作していて、なおかつその水準が低く、絞り込みようがないことBその存在感からして五十人と言う枠組みから落さざるをえなかったこと、などである」(9頁)


 と述べている。
 例えば管理人が気づいたところでは、大御所作家では、筒井康隆氏が入っているのに、同じ関西出身の作家である小松左京氏(2011年逝去)や田辺聖子氏が入っていない。
 “女性歴史小説家”という括りで言うならば、藤本ひとみ氏が入っているというのに、肝心の大御所塩野七生氏は抜けている。
 純文学の大御所、北杜夫氏(2011年逝去)も入っていない。
 また福田氏は、笠井潔氏、島田荘司氏、綾辻行人氏、有栖川有栖氏、京極夏彦氏といった、いわゆるミステリーの「新本格」派に、本著で高い評価を与えているというのに、森博嗣氏(1996年デビュー)は入っていない。
 森村誠一氏、西村京太郎氏、内田康夫氏、赤川次郎氏ら、いわば「大量量産型ミステリー作家」が抜けているのは、


Aあまりにも濫作していて、なおかつその水準が低く、絞り込みようがないこと


という基準のためだろうということは、管理人にも想像できる。
 それにしても、重松清氏(2000年直木賞受賞)も抜けている。鷺沢萠氏(2004年逝去)も抜けている。横山秀夫氏(1998年『陰の季節』にて実質的にデビュー、2003年度直木賞の折の事態の紛糾により、直木賞との決別を宣言)も抜けだ。

『作家の値うち』の続編を予想する

 前述した100人のうち、逝去された作家は、続編では掲載されないだろう。なぜなら、


取り上げた作家・作品の選択は、現役主要作家の主要な入手可能作品とした。
 現役作家に限ったのは、本書が批評的刺激を与えるという目的を担っているためである。物故作家を取り上げるのは、安全であるし、気楽でもある。だが、故人にとっていかに厳しい判断を下そうと、あるいは肯定的な評価を下そうと、今後の日本文学の展開にはさほど大きな影響はない(もちろん無意味ではないが)。
 小説の未来そのものを憂うという本書の目的意識からすれば、やはり評価は現役の作家にこそ向けられるべきだろう
」(8頁)


とあるためである。
 この福田氏の編集方針に変更がないのであれば、続編では掲載されない物故作家は、

T エンターテインメント編
池宮彰一郎氏(2007年逝去)
井上ひさし氏(2010年逝去)
栗本薫氏(2009年逝去)
藤原伊織氏(2007年逝去)

U 純文学編
小川国夫氏(2008年逝去)
久世光彦氏(2006年逝去)
小島信夫氏(2006年逝去)
日野啓三氏(2002年逝去)
丸谷才一氏(2012年逝去)

 の方々となるだろう。少なくとも、エンターテイメント編で4人、純文学編で5人の空きが出来てしまっていることになる。
 また、『作家の値うち』出版(2000年4月)当時は存在感があり、収録して批評することに意味があったが、現在は活動しておらず、事実上の引退状態にあるか、もしくは執筆を続けていても収録に意義を見出せない現役作家も出ているだろう。
 逝去してはいないが、収録リストからは外されるだろう作家を予想してみよう。

T エンターテインメント編
逢坂剛氏
白川道氏
乃南アサ氏
馳星周氏

 の方々であろうか。



 さらに、日本の現役作家100人(エンターテイメント界から50人、純文学界から50人)を選出するという福田氏の方針に変更がないのであれば、50人+50人=100人という定員を満たすために、新しく収録される作家が当然いると思われる。
 新規収録されるだろう作家を予想してみよう。

T エンターテインメント編

石田衣良
恩田陸
重松清
福井晴敏
山本一力
横山秀夫

 また、福田氏はその存在を知らないかもしれないが、知ったのならば間違いなくラインナップの一翼を担える作家には、

佐藤大輔


氏が入るだろう。

U 純文学編

角田光代
川上未映子
森絵都
堀江敏幸
綿矢りさ

以上の諸氏であろうか。



 最後に、出版(2000年4月)後の、続編に掲載される可能性のある既存作家の話題作などを、トピックスの形で挙げてみる。

T エンターテインメント編
・重松清氏の大活躍
・島田荘司氏『摩天楼の怪人』(2005年)、『写楽 閉じた国の幻』(2010年)
・宮部みゆき氏『ブレイブ・ストーリー』(2003年)
・矢作俊彦氏『ららら科学の子』(2003年)、『悲劇週間』(2005年)

U 純文学編
・阿部和重氏『シンセミア』(2003年)
・川上弘美氏『センセイの鞄』(2001年)
・小川洋子氏『博士の愛した数式』(2003年)
・江國香織氏『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』(山本周五郎賞受賞・2001年)、『号泣する準備はできていた』(直木賞受賞・2004年)
・綿矢りさ氏『蹴りたい背中』(史上最年少19歳で芥川賞受賞・2004年)
・天童荒太氏『悼む人』(直木賞受賞・2009年)
・村上春樹氏『海辺のカフカ』(2002年)、『1Q84』(2009〜2011年)
・村上龍氏『希望の国のエクソダス』(2000年)、『最後の家族』(2001年)、『半島を出よ 上・下』(毎日出版文化賞と野間文芸賞受賞・2005年)、『歌うクジラ 上・下』(2010年)


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